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    記事No.10 [テイルズ オブ ケンプファー#2 キャラバンとともに] 返信ページ
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    ■10   テイルズ オブ ケンプファー#2 キャラバンとともに 
    □投稿者/ Castella 3回-(2012/05/10(Thu) 21:18:17)

     物資集積所のはずれには車庫がある。わざわざ言うまでもないが、車庫には車がある。それらの車の多くは蓋なし平トラックだ。それらはシタデルの住民が用事で外部へ行くときや、外部農場の労働者が足として使うのだ。外部で怪物に襲われてもいいように、車体は鉄板やコンクリート材などで補強し、前部には道路に放置された自動車の残骸をかき分けられるようドーザーブレードを装備させている。
     
     「―――一応確認しておくが、君らは今いくつなんだ?商隊(キャラバン)に加われるのは16歳からだぞ。…キャラバンは毎度人手不足だが、だからといって規定を破るわけにはいかない。年齢はクリアしているのか?」
     「もちろんです!」と、ゲオルク。
     「はい」
     車庫の受付は身分証などの提示は求めず、あっけなく二人を受け入れた。
    理由は先ほど受付が言ったとおり、人手不足であるためだ。シタデル人口の大半は女子供や老人、到底労働力にはなり得ない怪我人に過ぎない。キャラバンが必要とする若い男性はブラウエライターに徴兵され、そうでなくとも志願してシタデルを後にする。それどころか最近では女性ですら自ら志願する。従ってキャラバンが規定年齢に達していない子供を使うのも仕方が無いのだ。むしろ、それが通例となっている。
     
    「テンションあがってきたぜ!」と、はしゃぐゲオルク。
     ちょっとした冒険の始まりに心を躍らせるのはゲオルクだけではない。拓馬も同様だ。たとえ数時間とはいえ、ほかの仕事の倍近くの給料だ。これならきっと今夜はうまいものにありつけるだろう。市場でおいしいものというと、鶏肉の串焼きかフライドチキン。レストランなら豚肉の野菜炒めなどがある。考えただけでもよだれがたれそうだ。

    「…お願いします」
     突然拓馬は足を捕まれた。物乞いの少年が足にしがみついている。
     「おい、物乞いは他所でやってくれ。俺たちだって金持ちじゃないんだ。それより市場の奥に居る「島」からのキャラバンに頼めよ」
     ゲオルクは勝本とその一味に物乞いしろよと言っているようだ。
     「もう何日も、何も食べていないです」
     少年はそう言って足を離さない。枯れた植物のような少年を力ずくで弾き飛ばすのは簡単だろう。
     「おいおいおい!拓馬、わかってんのか?共倒れだぜ?」
     ワンコイン手渡した拓馬に驚愕するゲオルク。
     少年はありがとうと言った後に市場のほうへと向かっていく。
     
     「…あーあ。明日またお前に物乞いするぞ。わかっているんだろ?」と、ゲオルク。
     「ああ。でも、自分があの子の立場だったら、こうしてほしくないか?」
     「拓馬は優しいを通り越して甘いぜ。生計を立てられない奴は倒れる世の中だ。そりゃあ、人助けが大事だって事はわかっているが、自分も倒れたら元も子もないじゃないか?俺だって恵まれない子供を助けたい気持ちはあるけど、それだけの金がないと話しにならないしよ」
     駐車されたトラックの方向へ歩き出し、拓馬は言った。
    「いいさ。今日はお前のおかげで美味しい仕事にありつけたんだ。少しぐらい問題ない」


     拓馬らが大型のおんぼろトラックの荷台に乗ると、そこには交易品とそれを運ぶキャラバン。さらにそれらを護衛する自警団の面々が待っていた。
     やはり若い男性は俺たちだけだな…と、改めて認識する拓馬。キャラバンも自警団も殆どが老人だ。おまけに、手にしている武器も薄汚れた自動小銃や拳銃程度だ。運転席に上にはなにやら強そうな機関銃が搭載されているが、それもちゃんと動くのか疑わしい。
     
     トラックのエンジンが動いた直後、キャラバンの隊長は口を開いた。
     「よし皆、知っているだろうが、最近はこの辺りも物騒になっている。先月4両の武装トラックに護衛されたキャラバンが全滅させられた事件があったように、今後キャラバンは制限が許す限り護衛を強化していくだろう。そしてガイスト共もそうだが、略奪者たちの動きも活発になっている。人間が現れても警戒を解くな。武器を持っていそうなら尚更だ」
     
     車庫から出たトラックはシタデルのゲートへ向かった。運転手がゲートの警備員とやり取りを終えると、分厚いゲートはゆっくりと口を開く。
     ゲートが開き終わると、他のトラックと合流し車列となったキャラバンはゆっくりと前進し始める。
     
     「あー、マイクテスト。マイクテスト。無線は問題ないな。キャラバンリーダーから各車へ。気を引き締めていけ。“ちくさ高原”まで長いドライブになるからな」
     「どんな場所なんです?」
     キャラバンリーダーに質問したのはゲオルクだ。
     「ちくさか?私が若いころ…まだガイストが現れる前は観光地としてにぎわって、スキー場や温泉があるいい公園だった。今では難民キャンプでしかないが、畜産もやっている。私らは芋や小麦を連中に売りつけ、連中は私らに肉を売ってくれる。私はいろんなキャンプやシタデルの交易品を運び、現地で様々な食事をしたが、特にここの肉は絶品だぞ。あと現地で食べるうどんや焼きそばもいい」
     
     車列は老朽化しているものの、きっちりと舗装された道路を進む。リーダーの話は聞いていたが、今のところ拓馬に緊張の様子はなかった。拓馬から言えば、ここはまだ見慣れた場所でガイストの襲撃は殆どない安全圏だ。農場へ向かうときもまれに小さなガイストを目撃するが、軽トラで跳ね飛ばして終わりであるのが通例だった。もし中型のガイストが出てきても今乗っている大型トラックならやはりひき逃げKOだろう。
     
     「拓馬はちくさ高原に行ったことあるのか?俺はこのあたりのことはよくわからん」と、ゲオルク。
     「いや、世間話で聞くだけで実際に行くのはこれが初めて…」
     「みんなつかまれよ!」
     何だって? 拓馬とゲオルクは声の主である運転手にどういう意味なのか尋ねようとするが、意味ならすぐにわかった。直後にトラックは鈍い声を出し、車体が微妙に浮き上がった。
     「ワンストライク」
     運転手はご機嫌そうにそういうと、左手で後ろを指差した。それを視線でたどる拓馬とゲオルク。道には4本足の生き物が血を流して横たわっている。
     
     ―――地獄犬(ヘルハウンド)だ。
     拓馬は直感でそう思った。ガイストの総称で呼ばれる化け物は多種多様だが、拓馬は実際に地獄犬に襲われたことがあるのだ。ただ、これまで見てきたヘルハウンドはほぼ間違いなく群れで行動していた。なのに、今回はどうして1匹だけなのだろう?群れからはぐれたのだろうか?あるいは近くの茂みに仲間が潜んでいて、あとから俺たちをやる気なのか。またはこの大型トラックの迫力に恐れをなしたのか…。とにかく気をつけるべきだと拓馬は自分に言い聞かせる。
     
     「アンちゃんたちはキャラバンに同行するのは初めてか?なあに、犬が飛び出してくるのはよくあることだ。だがもし乗り物に乗っていない時に出くわすと厄介なものだ。犬は私らより素早く機敏だ。群れでやってきたらひとたまりもないだろうな」
     キャラバンのリーダーは言う。ヘルハウンドはそれほど強い敵ではないが、いざ群れを成してやってくると武装したキャラバンを圧倒することもあると。これまでに多くのキャラバンや労働者がヘルハウンドに襲われており、決して過小評価できないことも。
     
     
     荒れた山道を何時間も駆け抜け、ようやく車列はちくさ高原に到達した。
     ここにシタデルのような鉄板のゲートや防壁はない。ただ土嚢(どのう、砂袋の意)で作られた機関銃による防御陣地と木製の囲いがあるだけだ。
     
     「随分手薄だな…」
     拓馬がそういいこぼすと、ゲオルクもそれに同意した。こんなのじゃ攻められた途端におだぶつだと。
     
     「そうでもないさ」と、キャラバンリーダーは地面にいくつか突き刺された看板を指摘した。
     それに何かが書かれているが、この距離ではその小さな文字は読み取れない。するとリーダーは付け加える。
     「看板が立ててある場所には地雷が埋めてあるんだ。踏んだらドカンさ。何百も埋めてあるらしく、ここ数年防御ラインを突破されたことはない」
     内側には木製の柵があるので、家畜が誤って地雷を踏むことはなさそうだ。だが、地雷のないこの道路から攻め込まれたらどうなるのだ?
     
     「やあ、どんな調子だい?」
     ちくさ高原の検問所で、見張りが一同に声をかけた。みな適当に返事をする。
     「まあ長旅で疲れているだろう?中でゆっくりしていってくれ」
     貧弱そうな木材ゲートが開きトラックは中へと吸い込まれる。ゲート近辺には戦車のように武装されたブルドーザーが止まっている。きっと有事のときはこれが入り口を守るのだろうか。ほかにもトラクターやダンプトラックなどの「働く車」の姿がうかがえた。
    そしてトラックはそのまま高原キャンプの物資集積所へ赴く。拓馬とゲオルクは仕事である物資の積み下ろしを手伝い、すべて下ろしたところで15分間の休憩を貰うことができた。
     
     「腹減ったな」
     ひと働きしたら腹ペコだとゲオルク。拓馬も激しく同意だ。
     「何か食い物を探そう」
     と、拓馬は周囲を見回す。レストランとかそのたぐいの施設はないか?だが、ここには建物らしい建物が殆どないように見える。あるのはトラックとコンテナ。テントや山済みにされた木材やごみの山ぐらいだ。
    …家すらないのだろうか?ここの住居事情はどうなっている?自分のとこのシタデルは粗末なプレハブ小屋だが、ここは更に粗末だった。コンクリート製の大きな建物がひとつあるだけで、それにこびり付くようにテントが押し寄せているのだ。良くも悪くも「キャンプ地」というほかない。だが、とつぜん香ばしい香りが拓馬の脳天に直撃したのだ。

    「拓馬、うどんだぜ!」
    ゲオルクは拓馬の腕を引っ張る。
    「あ、おお!」
     うまそうな香りの元はうどんの屋台のようだ。一人前600円。やや高いが、空腹な二人にとって目の前の食事は喉から手が出る程というやつである。
     それで味は?
     この味覚を口先で表すのは、円周率を100桁暗記するのより難しいだろう。とにかく、頬が崩れそうだったのだ。
     もっと食いたい。だが財布の事情を考慮すると手が止まってしまうのだ。それでも、ここは気軽に遊びにこられる場所ではないので、多少のフンパツは許容範囲なのではないか?そうだろう!と、二人は考え始めていた。
     
     「そこの少年たちよ。場所を空けてほしい」
     うどんに夢中になる二人の背後から、高め声が突き刺さった。
     うどんをもぐもぐする拓馬の代弁という具合に、ゲオルクは反論する。
     「今食事中なんだよ。順番を守ってくれ」
     「受け取ったら速やかに場所を空ける。それがうどんバーのマナーなのだが」
     ゲオルクはうどんを口に押し込む。今度は拓馬が言った。
     「そうなのか?それは悪かった。今日はじめてここに来て勝手が…」
     
     拓馬が振り返ると、そこには黒のロングヘアーの女の子がいた。…言葉使いからして男だと思っていたのだが。
     
     「どうした?私の顔に何かついているか?」
     ずいずいと二人の間に割ってはいる少女。なんだか妙な女だ…と、思う拓馬。なぜか学校の制服を着ているし、背中には武器らしきものまで背負っている。一体何者なんだ?ただ、この制服はどこかで見たことがあるぞ…。
     「いや、別に」
     「そうか。―――すまない。私にはホルモンうどんを一人分貰えるか?」
     そしてうどんを受け取ったらそそくさと立ち去る少女。
     
     「…何なんだ、今の男女」
     うどんを食べながら言うゲオルク。
     「知らねぇよ」
     同じくうどんを口に運ぶ拓馬。
     
     
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