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記事No.11 [テイルズ オブ ケンプファー#3 迫る闇] 返信ページ | |
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■11 テイルズ オブ ケンプファー#3 迫る闇 | |
□投稿者/ Castella 4回-(2012/05/10(Thu) 21:21:33) |
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―――休憩時間が終わるころになると、二人はトラックの所に戻り交易品を積む作業に取り掛かっていた。 今回の交易で手に入ったのは大量の塩と天然の湧き水。塩漬けされた牛肉と豚肉の塊。そして瓶詰めされたヤギのミルクと10匹の鶏だ。どいつもこいつも気性が荒く、拓馬らがケージに手をかけるとくちばしで乱れ突きをしてくるのだ。おかげで手が何箇所もはれ上がってしまった。 まあ、この後うちのシタデルで食べられるのだから、必死で抵抗するのは理解できる。こいつらがこの後の展開を知っているのかは謎だが。そんな時、拓馬はふと思った。俺たち人間に「食べられるために」生まれてきた身というのは、一体どういう気持ちなのだろうか?この鶏たちは自分の結末を知っていたら、それでも生きようと必死になるのだろうか?そうだとすると、今の人類と大して変わりないのかもしれない。 「俺はチキンが嫌いになりそうだぜ」拓馬同様に、手を腫れ上がらせたゲオルクが言った。 「でも、しばらくしたらチキン食いたいって言うんだろ?」 きっと生きている鶏が嫌いになっても、こんがり揚げられたチキンは嫌いになれないだろう。 フライドチキンはシタデルの食事ランキングを作るとすれば、高確率でベスト3にランクインするであろうグルメだ。 そして荷物の積み込みを完了すると、キャラバンはトラックに乗り込みちくさを後にした。 だがしかし、出発後10分経過したあたりで拓馬らが乗るトラックがエンジントラブルに見舞われたのだ。修理には時間が要るらしく、食料を積んだ別のトラックは護衛の武装軽トラックを引き連れ先にシタデルへ帰ることとなった。 「悪い予感しかしないな」 キャラバンのリーダーは双眼鏡で周囲を見回しながらつぶやく。 「ガイストですか?」と、拓馬。続けてゲオルクも敵襲なのかと問う。 「いいや、まだ化け物どもは現れていない。だが必ず来るぞ。なにせここには新鮮で様々な肉があるからな」 …つまり俺たちのことか。 と、拓馬は心の中で受け止めた。 リーダーは数分おきにトラック下に潜った運転手に「修理できたか?」と言うが、答えはずっと「あと10分」であった。やがて痺れを切らしたのか、リーダー自身もトラック下へ潜っていく。 こんな状況で襲われたら…と考えただけで、拓馬は胃が痛くなった。武器は持っていないし、トラックは故障中だ。護衛に1両の武装軽トラックが残っているものの、正直頼りない。とにかく一刻も早くエンジンが直ってくれることを祈るしかないのだ。 「スマン拓馬。俺が誘ったばかりに、面倒に巻き込んじまった…」と、頭をポリポリするゲオルク。 拓馬は言った。「いや、気にしてない」と。 そのときだった。ブワっと吹き付ける風とともに、狼のような叫びが前方から響く。今度は右側。そして後方と左側…。 叫び声が切れる前にキャラバンのリーダーは言った。「武器を構えろ!」 ひとりの自警団員が軽トラックに飛び乗り、運転席上に取り付けられた機関銃を構える。そして運転席からも銃を手にした団員が飛び出してきた。 「まだ修理できないのか!?」とリーダーが問う。トラックの下から「もう1分ですよ!」との返答。 「1分後にも同じことを言うなよ!?」 やがてキャラバンリーダーは拓馬らが乗るトラックにあるボックスに手をかけた。中には使い古された外国製の自動小銃がある。リーダーはそれを手に「撃ったことはあるか?」と拓馬らに言った。 「い、いえ…猟銃なら」 「ないです!」 拓馬もゲオルクも、本格的な軍用銃など扱ったことがない。拓馬は以前、狩人のアルバイトで猟銃を何回か撃ったことがあるが、それは二連発の簡単な銃にすぎないのだ。それでも、シタデルのゲート警備の時はそれなりに近代的な武器を持たせてもらえたが、結局その銃を撃つ機会は今までにめぐっては来なかった。 「…使えるようにしておいた。後は、狙って撃つだけだ。人間以外は全部撃て」 押し付けるように銃を渡すリーダー。戸惑う二人。 続けてリーダーは運転手に状況を尋ねる。もう少しという返事があるが、もう敵はこちらに目をつけているのだ。拓馬らを取り囲み、メリーゴーランドのようにぐるぐると回っている。攻め入る隙を伺っているようだ。 「よし、いけそうだ!エンジンをかけるぞ!」 運転手が這い出てきて、運転席に飛び乗ったそのときだ。ヘルハウンドの群れが一斉にこちらへ向きを変えたのだ! 「くそ、各自撃て!!」 リーダーの号令と発砲を合図に、キャラバンらの銃が火を噴いた。一方でエンジンはまだエンストしている。「早く出せ」とリーダーが叫ぶが、いまだエンジンはエンストしたままだ。キャラバンたちは迫り来る犬を打ち倒すが、茂みや森の中からは次々と増援が現れている。ゲオルクは「どうすればいい!」と呟いてばかりでどうにもなりそうにない。拓馬は慣れない手つきで銃を構え、接近してくる犬を撃った。そうだ、狩りのときと何も変わらない。慎重に狙い、軽く引き金を引くだけだ!恐れなくていい!狙って撃つ繰り返しじゃないか…。子供にだって出来る、簡単作業の繰り返しだ。と、自分に言い聞かせる拓馬。 「やったぞ!みんなつかまれ!」 ようやくエンジンがかかった。そうなると長居は無用。二両のトラックは疾風のようにその場を去った。 すばやく危険で悪名高いヘルハウンドも、近代科学の固まりである自動車には追いつけもしない。 「…みんな無事か?」とキャラバンリーダー。特に負傷者は居ない。彼は続けて言った「さっさと帰ろう」 …緊張か興奮なのかわからないが、拓馬の胸はまだバクバクしている。指先は思うように動かず、痺れの波が全身を包み込むのだ。何十回も深呼吸を繰り返し、落ち着きを取り戻すまでに何十分の時間を要しただろうか?あのヘルハウンドの鉄板ですら噛み砕きそうな牙を思い出すと、また震えが自身を襲うのだ。 「…拓馬ぁ、お前戦った経験あるのか?意外とすんなり、戦闘に参加していたみたいだけど」 ゲオルクは戸惑いの表情で拓馬にそう言った。 「ハンティングの経験ならあるんだ。だから…いや、パニックになって乱射していただけさ…」 今もまだ頭が真っ白だ。拓馬はゲオルクからすれば勇敢に戦ったように見えたようだが、実際は今言った通りだ。今度また同じ目に会ったとき、ビビらないで戦うことができるか?正直自信がない。 そしてまもなく我が家であるシタデルに着く頃だ。 ようやく一安心できると全員が思ったが、シタデルがある辺りから煙が昇っているのを視認した途端に安易ムードは粉砕された。 「リーダー、シタデルの様子が変ですぞ」 運転手の言うとおり、様子は変だ。黒い煙がもくもくと立ち上っている。バーベキューをしていたとしても、これは規模が大きすぎる。 「全員武器弾薬を確認しろ。略奪者の襲撃かもしれん!」 「マジかよ…ツイてない一日だぜ」と、ゲオルク。 キャラバンはシタデルへと帰ってきた。だがゲートは崩壊し、残骸がキャンプファイヤーのように燃えている。いつも此処で農場帰りの拓馬を迎えてくれた警備の面々もいない。ゲート跡には空の薬きょうが多数転がっていた。つまりこれは、警備の面々が何者かと戦闘をおこなったということだ。そしてそのゲートの奥には、戦車のようなブルドーザーの変わり果てた姿があった。運転席はプレスされたかのように潰され、車体には鮮血がべっとりだった。 「こいつはひでぇ、最悪だ」と、運転手。 トラックは徐行のままゲートを通過し、シタデル中央の市場へ直行した。だがいつも人でにぎわう市場は、竜巻に襲われたかのようだった。 豚や鶏などの家畜の死骸が横たわり、物資や交易品の入った箱が無造作に転がっている。 「何があったんだ?」 唖然とするゲオルク。 「俺にもわからない」と、拓馬。 冷静に考えれば略奪者かガイストの仕業に違いないが、今の拓馬らに冷静な考えをするだけのゆとりはなかった。このシタデルは医療レベルも低く、食糧事情も娯楽レベルも低い腐った場所だ。だが、行く当てのない拓馬を快く受け入れてくれた「実質上の故郷」であった。そんな故郷の変わり果てた姿を目の当たりにした以上、絶句するしかなかったのだ。どうしてこうなった?そして、これからどうしたらいい? 「なんてことだ」と、リーダー。 市場の一角に破壊された武装トラックがあった。拓馬もそれは知っている。こちら側のトラックが修理で立ち往生したとき、交易品を積んで先に帰還するトラックを護衛していた連中だ。機関銃はまだ煙を上げており、少し前まで戦っていたことを物語っている。 「みんな落ち着け。まずは生存者を探そう」 そう言って停車したトラックから飛び降りるリーダー。ほかのキャラバンたちもそれに続く。 「俺らも行こうぜ」とゲオルク。拓馬も「ああ」と返事をして後に続いた。 しかし妙だ。人間の略奪者に襲われたのなら、遺体があってもいいはずだ。だがシタデル住民も略奪者の遺体もない。略奪を行うアウトローがわざわざ殺戮の跡に埋葬を行ったとは思えないし、どこかへ持っていったとも考えられない。そうなると、だ。 「なんの音だ!?」 キャラバンの一人が叫んだ。地面をたたく音が徐々に迫っている。やがてシタデルの外壁を木っ端微塵に突き破り、拓馬らの所へ一直線に向かってくるのは戦車のように大きい巨人タイプのガイストだった。 「ギガントだ!」 「各自任意に撃て!」 キャラバンとトラック上の機関銃が一斉に火を噴いた。だが機関車を空気銃で撃ったかのようにまるで効果がない! 最初に機関銃を撃っていたトラックが叩き潰され、次にその近くに居たリーダーもが潰された。拓馬はあわてて自動小銃を構え引き金を引いたが生憎弾切れだった。予備の弾を使おうと、あらかじめポケットに入れておいたマガジンを取り出し装填する。だが再び構えた時点でギガントがトラックをこちらに投げ付けていたのだ。避けなければと思った途端に、拓馬は地面を転がるトラックに巻き込まれてしまった。 気を失ったのかわからないが、意識が戻ると拓馬はまだシタデルの市場に倒れていた。後ろにはつぶれたトラックが見える。心臓の鼓動が高鳴り、体のさまざまな場所から血が出ている。おまけに壊れたおもちゃの様に、左手が妙な方向に曲がっていた。骨折したのだろうか?よくわからない。不思議なことに痛みを感じなかったのだ。だが、体は非常に重く、思ったとおりに動いてくれない。 視線を水平に戻すと、そこには鬼のような巨人と必死に応戦するキャラバンの姿があった。だがキャラバンらの銃撃は無力極まりなく、次々とギガントに潰されていく。するとギガントが拓馬に視線を向けた。マズい!こっちにくるぞ!拓馬は手前に落ちていた銃を拾い上げそれを撃ったが、それで相手を阻止できないことは明白であった。だが、どちらにせよ今の拓馬にはそれが唯一の反撃手段だったのだ。 「くそ…!」 シタデルの隔壁を粉砕したギガントの両腕が拓馬を潰そうとしたそのときだった。後ろのほうから別の銃声が鳴り響いた。 巨人はその巨体をダンサーのように揺らし仰向けにひっくり返る。 「シタデルの住民は…間に合わなかったか。最悪だ。もう少しだけでも早く到着できていれば…」 甲高い声が後方から聞こえる。やがて声の主は拓馬の視界に現れた。 「でも、不幸中の幸いだった。目標はまだ達成できるかもしれない。さあ、私がここから連れ出すから心配しないでいい。帰ろう」 目の前に現れたのは、黒髪のロングヘアーをした女の子だった。 |
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