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記事No.30 [テイルズオブケンプファー#13 祈りを力に変えて] 返信ページ | |
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■30 テイルズオブケンプファー#13 祈りを力に変えて | |
□投稿者/ Castella 17回-(2012/08/10(Fri) 20:34:32) |
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「島」には大中小様々なビルが立ち並び、いわゆるコンクリート・ジャングルというものを作り出している。多くの建造物は居住用のマンションであり、次いで多いのが食料や武器の生産プラントである。他には、内陸にある飛行場や学校などの教育関連施設。そして病院などの福祉施設だ。そして市場や映画館のような娯楽施設が少数点在する。そしてそれらの中でも、ひとつだけ背の高いビルがコンクリート・ジャングルの中央にそびえ立っている。そのビルが人類の救済者である、ブラウエライター・アジアの本部ビルなのだ。 そしてその本部ビルのふもとに、人だかりが出来ている。集まっているのはブラウエライター公認の報道機関の関係者たちで、皆がひとつの対象にカメラを向けていた。それらのレンズの映るのは、ビル入り口の階段上にある演説台とそこに居る人物である。 その人物は、数十名の衛兵をバックに演説をする、ブラウエライター議長「ウルリヒ・ノイマン」だ。 “―――わがブラウエライターは、前世紀から今日に至るまで世界平和のために戦ってきた。あるときはテロリストと。あるときは平和を脅かす国家と。我々は常に平和の為に戦ってきた。 歴史を振り返ってみると、我々人類は常にその身を戦いの中に置いてきた。世界史の教科書の多くが戦史であることが物語るように、人類の歴史は戦争の歴史ともいえるだろう” 大勢の兵士や報道関係者、一般人が見守る中、彼は堂々と力強く演説を続ける。 客観的に見れば、偉そうな人が慣れた演説をしているに過ぎないが、実施のところそれだけではない。 背後に居る衛兵たちのリーダー、ウィリアム・バトラーはノイマン議長に忠誠を誓った一人だ。彼の心を文体にすれば、ノイマン議長の演説は人々の心に「最後まで諦めない」という闘争心に火をつけるのだ。どんなハイテク装備を持っても、結局それを使うのは人間である。つまり戦う意志なくして勝利はありえないのである。そういったカリスマ性を持ったノイマンは、瞬く間にブラウエライター・アジアのリーダーに推薦された。 そして演説するノイマンを見守るバトラーは、これで皆が一致団結してガイストに立ち向かうことに間違いないと確信している。 “―――ただし、それらの「昔の戦い」は人民や国家の自由、資源や土地などの『生存権(レーベンスラウム)』の為だった” 本社ビルの上空を戦闘機が通過し、それに続いてヘリコプターの群れが陣形を組んで飛び去っていく。 それらの轟音に負けないよう、ノイマン議長は更に力強く演説する。拡声器があることを知っていても、とにかくノイマンは人々の心に訴えかけるように言った。 “―――だが、アンゴルモア・ウイルスの大流行と「ガイスト」の出現により、全てが変わってしまった” アンゴルモアは99年代に発生した未知のウイルスである。これは狂犬病のような感染症で、発症すると皮膚に異常が生じ、凶暴化して無差別に非感染者を襲い始めるというものである。これは狂犬病とは違い人から人へも伝染するため、ちょうどゾンビ映画ように増殖してしまうのである。これにより50億人以上もの犠牲者を出してしまう。そして生き残れたのは、免疫を持っていたほんの少数の者達だけであった。 だが…そんな生き残った人々に、更なる試練が立ちはだかった。それは「ガイスト」と呼ばれる敵性生物との戦いである。先の件もあり、世界の社会基盤や軍事的防衛能力は著しく低下しており、満足に抵抗出来ぬまま大陸の多くを奪われることになった。それが、この世界の歴史の大まかな概要である。 “―――我々は、これまでとは明らかに違う目的の為に銃を手に取った。それは圧制からの解放や、自由の為ではない。我々人類の、種の存続を賭けてだ。だが、この戦いもまもなく30年を迎えようとしている。過去の戦いと比較しても、この戦いは非常に長すぎる。この長期戦によって、我々の将来を担うはずだった多くの若者が消えてしまった。これ以上、その繰り返しを招いてはならない” 今から110年ほど昔に行われた欧州大戦…つまり第一次世界大戦と呼ばれる戦争では900万人の犠牲者を出した。そしてわずか20年もしない間に二度目の世界大戦がボッパツし、5000万人を超える犠牲者を出した。 数値的に見れば二つの世界大戦は甚大な数の人命を葬り去ってきたことが分かる。しかし「世界が変わった」今、過去の戦争による犠牲者の数は非常に緩やかな物だ。アンゴルモア・ウイルスの大きすぎる被害の後、日々多数の人間を捕食する【ガイスト】の出現により、人類は絶滅の危機に晒されているのだ。 “―――この戦いで我々は数多くの人命のみならず、数多くの文化と領土、国家とコミュニティを失った。これが続く限り、我々の絶滅も時間の問題だ。まさしく、ジョン・フィッツジェラルド・ケネディが言うところの「我々が戦いを終わらせねば、戦いが我々を終わらせる」そのものに違いない。したがって我々は、終末を迎える前に、この戦いを終わらせなければならないのだ!” その通りだ!という具合に兵士や一般人たちが同意の声を次々とあげると同時に、ヘリの編隊がビル上空を飛び去った。 この演説は報道機関によって、島外部のシタデルやメガロポリスにも中継されているので、更に多くの人々がこれを聞いて同意の声をあげているに違いない。 「…けねでぃーってどなたはんやろか?」 たった今、本社ビル上空を通過したゼグラーフォーゲル・ヘリコプターの群れの中1機。その乗員室に腰掛ける南部喜花が、知らぬ外国人の名前にクエスチョンマークを浮かべる。 その隣に座る拓馬は「アメリカの、昔の大統領」と簡潔に答えた。すると拓馬の隣に座るケンプファーのシンも、右手で自分の武器をいじりながら“I like Half dollar”と呟き、左手の人差し指の上で外国の通貨をスピンさせる。 開放されたドアから入り込む風が心地よく、周りの景色も良く見える。 高々とそびえ立つビルと、それを取り囲む様々な形のビル。そしてそれらの建物と建物を結ぶ道路と、景観を改善するための小さな公園。シタデルという難民キャンプと比較して、まさしく未来的な町並みだ。 そして自分で操縦しているわけではないが、拓馬はかすかに喜びを感じていた。「久々に空を飛んでいるぞ」と。 更に周囲を見回せば、多数のゼグラーフォーゲルが渡り鳥のように陣形を組んで飛行している。見ていて壮観の他ならない。 “―――数多くの犠牲を出し、我々は東京を化け物たちから取り戻した。だがそれでも、我々の立たされている状況は芳しくない。不本意ながら、先月行われた空爆と長距離砲撃は十分な打撃を与えられず、敵は中部地方で勢力を拡大中だ。その数は今この時も増え続け、おびただしいものとなっている。奴らが準備を整え、総攻撃に踏み切るのは時間の問題だ!” 演説場に居合わせる何名かの兵士と一般人らがうろたえた。 今でさえ厳しいのに、敵はまだ本気を出しておらず、更に激しい攻撃を加えてくるというのか?と。 “―――そして今、我々最後の希望であるこの「島」までもが、消えていった数多くのコミュニティの後を追おうとしている!” ここで拓馬の左腕に装備されたPDAが反応する。電子メールだ。開いてみると差出人はKate bellharenと記載されている。本文はCome back aliveとあった。 そんな拓馬の向かい側に座る天龍は「彼女からメールか?」と冷やかしたが、拓馬は「ちがいます」と穏やかに否定した。拓馬はケイトへの返事を打ち始める。内容は「日本語で頼む。でも心配してくれてありがとう」とした。 “―――暴力を振りまく悪魔、ガイストが我々人類を終わらせようとしている。そうなる前に、我らが進むべく道は唯一つである” 拓馬は画面の送信パネルをタッチし、送信を確認するとPDAの画面防護スライドを閉じた。 そして空という懐かしい場所の心地よさに浸りながら、再び視線を外へと向ける。 “―――攻撃(Der Angriff)側に回るのだ” ノイマンを見守る兵士や一般人たちの歓声がどっとわき上がる。 そうだ!この機会に奴らへ強烈な一撃を食らわせてやろうぜ!という具合に、ノイマンの演説で皆が士気を高揚させた。これまで防戦一方だったことへの不満も、今回の士気に大きな追い風になったに違いない。 一方、拓馬たちを乗せたヘリコプターの群れは、島のはずれにある海軍基地の上空に差し掛かった。港では兵士や車両が次々と船に積み込まれ、すでに多数の軍艦が出航している。ヘリコプターはそれらの艦隊に合流しようとしているようだ。海上に浮かぶ近代的な艦隊と、上空を舞う多数のヘリコプターの編隊。シンが“Awesome”と漏らすように、それらは壮観の一言に尽きる。 無数のヘリコプターに多数の戦艦。これだけ味方が居るなら、きっと生きて帰れるだろう。拓馬は楽観的であると感じながらもそう思った。 “―――ブラウエライターの勇敢なる騎士たちへ。そして全てのケンプファー諸君。この戦いは、過去に無いほど厳しいものになるだろう。だが、避けては通れぬ道だ!” …このころ、ケイト・ヴェルヘイレンは空松中央学校の屋上に居た。 校舎上空を戦闘機やらヘリコプターやらが次々と飛び去っていく。それらが作り出した衝撃波が彼女の髪を乱れさせるが、ケイトは慌てずに自分の髪を整える。そして、兵士らを乗せたヘリが遠くへと飛び去っていくのを見送るたびに、自分に無力感を覚えるのであった。拓馬も含め、同年代の者が命をとして戦地へ向かうのに、自分はここで見送るだけなのかと。だが、一緒に行こうと思ってレンジャーなどに志願しても、結局父からの手回しで兵役を拒否されてしまう。女子の兵役は任意とはいえ、これでは臆病者みたいだ。 そんな彼女を元気付けたり慰めたりするものは居ない。あるのは航空機の騒音と遠方から拡声器越しに聞こえるノイマンの演説だけだ。 “―――今日という日を生き延び、明日もまた新たな一日を迎える為に。そして家族と共に生活を営み、子供たちは学校で青春を謳歌する。そんな暴力とは無縁の平和な世界を取り戻すために。そして、500万年にもわたって紡がれてきた人類の歴史に、明日もまた新たな1ページを刻む為に。今こそ、我々はガイストと対決しなければならない!” 拓馬らが乗るヘリは海上の大型軍艦に迫る。すでに軍艦の甲板には多数のヘリが着艦しており、レンジャーたちが続々と乗船していた。 更にその軍艦の後方にある港のような格納庫(ウェルドックとか言うらしい)へ、水陸両用トラクターが吸い込まれていくのが見える。 そこでヘリ操縦士である那智徒虎は言った「まもなく船に降りるよ。皆忘れ物のないように」と。 “―――ガイストの巣窟となった丹後山地に攻め入り、奴らに決定打を与える! そして体勢を整える時間を与えぬ間に、奴らを日本列島から完全に駆逐する!” 拓馬らの乗るヘリは高度をさげ、まもなく軍艦の飛行甲板に足をつけようとしていた。 波に揺られる船への着艦は決して容易ではないが、那智はモタつくことなくソリを甲板に設置させる。なんともスムーズな着陸だと、拓馬は心の中で感嘆の声をあげる。そして同時に疑問を持つ。このお爺さんはなぜこんなに操縦が上手いんだ?と。だがその疑問は後で判明する。 “―――我々は戦わずして滅びはしない!我々は勝利する!我々はどれだけ苦戦しても、必ず勝利を手にするだろう!そして、生態三角図(エコロジカルピラミッド)の頂点に君臨するのは、我々人間であるべきなのだ!” 「…パイパー丸へようこそ、天龍将軍。私はあなたたちの乗るLVの運転を担当するヒイラギです」 「ああ、よろしく頼む」と、天龍。 軍艦の飛行甲板に降り立った拓馬たちを出迎えたのは、柊と名乗る防護つなぎを着た細身の男性だ。 周りの甲板ではヘリの着艦と乗員の下車、ヘリの離脱が繰り返されている。気がつくと拓馬らを輸送してきた、那智の操縦するヘリは既に飛び去っていた。そしてこの場所は別のヘリが着陸するのに使うとのことで、すぐに場所を空けなければならない。拓馬たちは柊の案内で艦内へと続くエレベーターへ向かった。 “―――ブラウエライターの諸君。我ら人類の未来は、君たちに託された。諸君らが、人類の救世主になるのだ!” |
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