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    記事No.8 [テイルズ オブ ケンプファー#プロローグ : フラッシュフォワード] 返信ページ
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    ■8   テイルズ オブ ケンプファー#プロローグ : フラッシュフォワード 
    □投稿者/ Castella 1回-(2012/04/28(Sat) 20:56:44)



    “―――暗闇が大地を染め、破滅が都市に押し寄せようとしている。その暗闇が都市に到達してはいけない。到達すればジェノサイドでありすべてが終焉を迎えるからだ。だから絶対にそれを阻止してみせる…と、口先だけの決意ではあまりにも力不足だった。だが味方は殆ど存在せず、ともに肩を並べて戦ってくれる仲間すら居ない。あるのは、とても果たせそうにはない義務と目の前に迫った危機だけだった…”
     
     
     「起きろ!ケンプファーなんだろ!?」
     
     ケンプファーと呼ばれた茶髪の青年は、武装した男性の手によって立ち上がった。
     その男性の背後に広がる空は灰色だ。空からの破壊者が舞い降りてから、空の青はすっかり消え去っている。
     
     「ルフトクロイツァーを止めなければ!急ごう、ケンプファー!」
     「もちろんだ!」男性から武器を受け取り、青年は彼の後を追う。
     
     武器の状態は?問題ない。サーベルもライフルも、残りエネルギーは十分だ。足りないのは希望と勇気と、仲間の数だろうか。
     だがそれでも前へ進まなければならない。自分に与えられた使命と、交わした約束を果たすために。
     
     「気をつけろ!12時方向に鳥頭(バードヘッド)野郎だ!」
     
     男性はとっさに銃を構え、真正面に現れた敵を撃った。まるで中世の騎士のようにごつい鎧を着た敵は、近代的な自動小銃の弾を浴びても倒れない。
     何かの神話に出てきそうな鳥頭の敵は、剣を構えると刃先から光の矢を撃ちだしたのだ。男性は青年の目の前で頭を潰され、屍が灰色の地に横たわった。
     今度は青年自身がその光の矢の標的になるということは明らかだった。青年は敵の剣が光るのと同時に盾を構えた。光の矢が盾の表面で砕け散る。
     
     「邪魔をするな!」
     
     青年は武器の引き金を引いた。プラズマを帯びた銃弾が鳥頭の敵を沈める。すると「相棒の仇」と言わんばかりにもう片方の敵が突進してきた。青年は更に引き金を引いて地面にそいつを引っ付けた。まだ動いていたので、サーベルで止めを刺す。ほかにも敵が居ないのを確認し、空からの破壊者を追跡する。
     もう時間がない。空からの破壊者はもうまもなく都市に到達してしまう。自分自身がそれに追いついた地点で、都市がまだ無事だという保障はどこにもないのだ。今すぐに手を打たなければならない。
     
     「シア!シタデルはどうなっている!?答えてくれ! …駄目か!?」
     
     青年は通信を諦め前進を続ける。
     廃墟となった地上には瓦礫と力尽きた敵味方の遺体が山のように転がり、生きている者が居ても血を流し苦痛を顔に浮かべているだけだった。とてもではないが、この辺に戦えるような仲間なんているわけがない。
     もうこうなると独りでやるしかない!
     もう俺しか居ないのだ、と。

    「…なの!?聞こえます!そちらの状況は!?」
     無線がつながった!
     不幸中の幸いだ。援軍を要請できる。こんな状況だけに応援は不可欠だ。
    「最悪だ!周りは敵だらけで味方はもう全滅だ!シタデルにまだ戦える奴は居ないのか?援護が要る」
    「…ごめんなさい!ここにはもう十分な戦力がないの」
    「まさか、もう誰もいないのか!?そんなことは…」

     そのときだ。
     空からの破壊者が噴水のように光の矢を放ったと思えば、そのうちの一本が青年の目の前に着弾したのだ。地面が足元から離れ、灰色の空が真下に下りる。そして瓦礫の地が再び足元にやってきて、また空が足元に下りる。後もう一度それを繰り返したようだ。世界の回転が終わると、背中に何かが突き刺さったような痛みと、頭痛が同時に襲い掛かる。

    「…ちくしょう」
    たった一撃の攻撃でどれだけ吹き飛ばされた?青年の最初の思考はそれだった。
    そしてすぐさま足や体全体に力が入らないことを認識する。原因は破壊されたビルの跡地にあった。それはむき出しの鉄筋だ。吹き飛ばされた自分の体はそこへ落ち、腹部が鉄筋に突き刺さっている。痛みは我慢できそうだったが、自分自身の力でそれをどうにかすることは出来そうにない…それはだめだ!俺は奴を阻止しなければならないのだぞ?今すぐ立ち上がって戦え!と、自分に言い聞かせるが、赤ん坊のように地面を這いずり回ることしかできない。その間も「空からの破壊者」はどんどん先へ進んでいってしまう。このままでは、都市が吹き飛ばされるのを黙ってみていることしかできない。

     無力感に押しつぶされそうになる中、廃墟ビルの陰から追跡していたのとは違う「空の破壊者」が飛来する。追っている奴と比べればかなり小さいが、黒いオーラを撒き散らし青年の元へ接近している。どう見ても「手下が後始末をしに来た」ようにしか思えない。だが青年はあきらめることなく武器を構え、その来客にプラズマ弾をお見舞いした。プラズマ弾は来客の表面ではじけ飛ぶ。…一撃で足りないならもう一発くれてやる!

     「…くそ、空気の読めない玩具が!」
     弾が出ない!すぐにバッテリーを確認すると、エネルギー残量がそこをついている。しかも予備もなくなっている。さっきまでウェストバッグなどに十分な数のバッテリーなどがあったはずだ!だが青年は今の事実の原因を理解した。吹き飛ばされたときに、装備品を収納したバッグも吹き飛ばされたのだ。
     
     空からの来客が、青年を見下すように空中待機する。こちらに反撃手段がないということを知っているのか、勝利の余裕を持って見物をしているようにも思える。その来客の背後には、悠々と空を舞い都市へと侵攻する破壊者が見える。…奴を止めなければならないのに、対峙することすらできないのか!?今の青年にあるのは、悔しさと目の前に立ちはだかる来客のみ。そして、その来客は胴体の下部を光らせ止めの矢を放とうとしている。
      
     俺はこんなところで終わるのか?
     丁度幼いころに見た悪夢のラストシーンそのものだ。絶望に埋もれた最後の後に待ち構えるのは―――。

     
     
     
     
     (加筆フェイズ:1)
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